「お急ぎですか?」の捉え方。

私事なのですが、先日、祖父が具合が悪く、1人で実家に帰省しました。
祖父は、胃癌になってから治療を続けていましたが、高齢になり、手術のリスクも高く、強い薬に耐えられるほどの体力もなくなってきたので、緩和ケアに移行したばかりでした。
私は離れて暮らしているので、状況は詳しく知らなかったものの、今回、「危篤の状態」と聞き、覚悟はしていました。
大量に吐血したという連絡を受けた2日後に、病院に駆けつけると、なんとか一命を取り留め、意識が戻っていました。
とは言え、痩せ細って、かすれた声の祖父を見ると、胸が苦しくなりました。
私が看護師として病院で働いていた頃は、もちろん、病気の人たちをたくさん見てきたし、それが患者さんなのか、家族なのかで感じることが違うのは当たり前です。
おじいちゃんとの思い出が、走馬灯のように駆け巡り、それだけで涙が溢れてきました。
「アイスが食べたい」という訴えがあり、私たちが面会した前日には、食べていいという許可が出ていたそうですが、看護師さんに確認しなければと、ナースステーションで声をかけました。
すると、バタバタ忙しそうで、「少々お待ちくださいね」と、どこかに走っていきました。
とても大きな病院なので、すごく大変そうなのに、笑顔で対応する看護師さんに感動しつつ、アイスを買って、部屋で待っていました。
5分….10分….15分待てども看護師さんは来なくて、アイスがどんどん溶けていきます。
「遅いね。でも、忙しいもんね、」
と言いながらも、20分経ったくらいで、アイスがドロドロになってしまうのを見て、
「ちょっと見てくるね」
と、廊下に出ると、点滴のボトルを持って、走っている看護師さんに遭遇。
「お待たせしてすみません!お急ぎの用ですか?」
と聞かれました。
目の前には、点滴ボトルを持つ看護師さん。
病室には、アイスを待ち望んでいる祖父と、溶けてきているアイス。
看護師さんの言っている、「お急ぎ」の意味は、きっと、命に関わること。
だけど、こちらにとっても、「お急ぎ」の状況でした。
もちろん、そこで手を止める訳には行かないので、「いえ、急ぎではありません。こちらでアイスを食べさせてもいいですか?」とだけ聞き、
「ベッドを上げてゆっくりお願いします。」
とニッコリ笑顔で話してくださり、アイスを食べさせてあげることができました。
私は今までの看護師としての自分の関わりを振り返りました。
もし、私がこの病院の看護師なら、こちらが急変の対応をしているときに、「アイスが溶けそうなんですけど、、」と言えば、
「そんなの緊急じゃないでしょう?!」
と思ってしまうかもしれません。
でも、その「緊急か、緊急じゃないか」は、100%自分のものさしで判断したもの。
立場が違うと、持っているものさしが違うから、自分のものさしで物事を判断すると、相手と全くズレてしまうことがあります。
面会に来た家族にとって、目の前にいる大切な人を思うと、アイスが溶けてしまうことも、「お急ぎ」だったんです。
とっても素晴らしい看護師さんの笑顔と、その後の対応に、感動しました。
今回の関わりで、相手と接するときに、自分の価値観を押し付けてはいけないと、強く思いました。
例えばクライアントさんが、「お給料が50万円しかもらえなくて辛い」と言ったとして、「え?50万円ももらっていてなんで辛いの?ちょっと、無駄遣いでもし過ぎてなんじゃないの?」と返したらどうでしょうか?
勝手な自分の価値観で、「50万円ももらえるんだからいいじゃない!」と思ってしまうと、クライアントは「コーチにも分かってもらえない」と、心を開いてはくれません。
こんなときは、自分の価値観は、捨てます。
100%相手に寄り添います。
「お給料が少なくて辛い」という言葉だけでなく、その奥底にある、本当の気持ちを引き出すんです。
コーチとして、クライアントに対しては、絶対否定しないし、ジャッジはしません。
自分自身がフラットな気持ちで、全てを受けとめるのがコーチです。
「こんなこと話したら、どう思うかな….」や、
「どうせ分かってもらえない……」
と思っていた人が、
「この人になら話せる!」
「なんだか背中を押されて元気になる!」
と言ってもらえると嬉しいです(^^)
そんな唯一無二な存在を、是非体験してみてくださいね!